2026年、日本の夏が変わる。企業に突きつけられた「義務」の重さ
2025年6月1日、改正労働安全衛生規則が施行され、職場における熱中症対策が強化されました。
これまで以上に、企業には「熱中症を防ぐための体制づくり」と「万が一、症状が出たときに重症化させないための対応」が求められています。
特に、工場や倉庫などでは、
「エアコンを設置しているのに、なかなか涼しくならない」
「シャッターを開けるたびに熱気が入ってくる」
「広い空間全体を冷やすのは、電気代が心配」
「作業員がいる場所だけでも、効率よく涼しくしたい」
このような悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、2025年6月から強化された職場の熱中症対策についてわかりやすく解説するとともに、工場・倉庫で考えたい「空調の効率を高める暑さ対策」についてご紹介します。
この記事でわかること
- 2025年6月から強化された職場の熱中症対策のポイント
- 熱中症対策が必要となる作業環境
- 工場・倉庫でエアコンだけでは暑さ対策が難しい理由
- 空調効率を高めるために考えたい「空間の区画化」
- 工場・倉庫における間仕切りカーテンの活用方法
- 1. 職場での「熱中症対策」はなぜ義務化されたのか?
- 2. 2025年6月から何が変わった?
- 2.1. ① 熱中症の症状を報告する体制を整える
- 2.2. ② 熱中症が疑われる場合の対応手順を決める
- 2.3. ③ 作業者へ周知する
- 3. 熱中症対策が必要となる作業環境とは?
- 3.1. 屋外での作業
- 3.2. 屋内での作業
- 4. 工場・倉庫はなぜ「エアコンだけ」では冷えにくいのか?
- 4.1. 広い空間全体を冷やすには、大きなエネルギーが必要
- 4.2. 屋根や外壁からの熱も無視できない
- 4.3. シャッターの開閉で冷気が逃げる
- 5. 「冷やす」だけでなく「冷気を逃がさない」という考え方
- 6. 工場・倉庫の暑さ対策は、現場に合わせた方法を
- 7. まとめ|2026年の夏に向けて、今こそ職場の暑さ対策を見直そう
職場での「熱中症対策」はなぜ義務化されたのか?
なぜ、職場における熱中症対策が強化されたのでしょうか。
背景にあるのは、近年の気温上昇と、熱中症による労働災害の増加です。
厚生労働省によると、2024年に発生した休業4日以上の熱中症による死傷災害は1,195人で、調査開始以来最多となりました。また、死亡災害も3年連続で30人以上となっています。
こうした状況を受け、2025年6月1日から改正労働安全衛生規則が施行され、熱中症による重篤化を防ぐための措置が事業者に義務付けられました。
つまり、熱中症対策は「暑くなったら気をつける」という個人任せの対策ではなく、企業として事前に体制を整えておくことが求められるようになったのです。

2025年6月から何が変わった?
今回の改正で、事業者に求められる主な対応は大きく3つあります。
① 熱中症の症状を報告する体制を整える
熱中症の自覚症状がある作業者や、熱中症のおそれがある作業者を発見した人が、速やかに報告できるよう、連絡先や担当者などの体制をあらかじめ整備します。
② 熱中症が疑われる場合の対応手順を決める
熱中症が疑われる作業者が出た場合に備え、
- 作業から離脱させる
- 身体を冷却する
- 必要に応じて医療機関を受診させる
- 緊急連絡網を使用する
- 救急搬送先を確認する
など、症状の悪化を防ぐための具体的な対応手順を事前に定めておく必要があります。
③ 作業者へ周知する
整備した報告体制や対応手順を、実際に作業する人たちへ周知します。
「熱中症になったらどうするのか」を、誰もが迷わず行動できる状態にしておくことが重要です。
今回の法改正のポイントは、熱中症が発生した後の対応だけではありません。
「熱中症が起きる可能性がある現場で、重症化させないための準備をしておくこと」
これが、企業に求められる重要な対策のひとつです。
熱中症対策が必要となる作業環境とは?
今回の改正で対象となるのは、原則として次の条件に該当する作業です。
- WBGT値(暑さ指数)28度以上、または気温31度以上の環境
- その環境下で、継続して1時間以上、または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業
対象となるのは屋外だけではありません。
たとえば、次のような現場も熱中症リスクが高くなります。
屋外での作業
- 建設・解体現場
- 高所作業や塗装工事
- 駐車場や道路での交通誘導・警備
- 屋外イベントの設営・撤去
- 資材の積み込み・荷下ろし
屋内での作業
- 熱源のある工場
- 天井が高く、空調が効きにくい工場
- 広大な倉庫やピッキングエリア
- フォークリフトの出入りが多い物流センター
- 空調設備があっても冷気が届きにくい作業場
- 調理熱がこもる大規模厨房

特に工場や倉庫では、屋内であっても「暑い環境」が生まれやすく、夏場の作業環境改善は重要な課題です。
なお、作業強度や服装などによっては、上記の条件に該当しない場合でも熱中症リスクが高まることがあるため、状況に応じた対策が必要です。
工場・倉庫はなぜ「エアコンだけ」では冷えにくいのか?
熱中症対策として、まず思い浮かぶのがエアコンなどの空調設備です。
もちろん、空調設備による温度管理は重要な対策のひとつです。
しかし、工場や倉庫のような大空間では、
「エアコンを増設したのに、思ったほど涼しくならない」というケースも少なくありません。
その理由は、工場や倉庫ならではの「冷気が逃げやすい環境」にあります。

広い空間全体を冷やすには、大きなエネルギーが必要
一般的なオフィスと比べ、工場や倉庫は天井が高く、空間そのものが非常に広い場合があります。
その広い空間全体を冷やそうとすると、大きな空調能力が必要になります。
しかも、冷やしたいのは工場全体ではなく、実際には「人が作業しているエリア」だけというケースもあります。
必要のない場所まで冷やしてしまえば、その分だけエネルギーも消費します。
屋根や外壁からの熱も無視できない
夏場の工場や倉庫では、屋根や外壁が太陽の熱を受けることで、室内の温度上昇につながることがあります。
エアコンで空気を冷やしても、建物そのものが熱を持っていれば、快適な作業環境を維持するのは簡単ではありません。
シャッターの開閉で冷気が逃げる
工場や倉庫では、フォークリフトやトラックの出入り、荷物の搬入・搬出などでシャッターや出入口を頻繁に開閉します。
そのたびに冷気が外へ逃げ、外から熱気が入り込んでしまいます。
「冷やしても逃げる」
「逃げるから、また冷やす」
この状態が続けば、空調設備への負荷が大きくなり、電気代の増加にもつながります。
だからこそ、工場や倉庫の暑さ対策では、「どう冷やすか」だけでなく、「どう冷気を逃がさないか」という視点も重要になります。
「冷やす」だけでなく「冷気を逃がさない」という考え方
工場や倉庫の暑さ対策を考えるとき、すべての空間を同じように冷やす必要があるとは限りません。
たとえば、
「作業員が長時間作業するエリア」
「検品や組立を行うエリア」
「温度管理が必要なエリア」
など、特に快適な環境を必要とする場所を優先して空調する方法があります。
そこで重要になるのが、空間を区切る「ゾーニング」という考え方です。
必要な場所を区画化し、冷気が必要なエリアに集中させることで、空調効率の改善が期待できます。
さらに、フォークリフトや人の動線を考慮しながら間仕切りを設置すれば、現場の作業性を維持しながら、冷気の拡散を抑えることも可能です。
つまり、暑さ対策は、
「強いエアコンを入れる」
だけが答えではありません。
「必要な場所を効率よく冷やす」
という考え方も、工場・倉庫の環境改善において重要な選択肢となります。
工場・倉庫の暑さ対策は、現場に合わせた方法を
工場や倉庫の暑さ対策に、すべての現場に当てはまる正解があるわけではありません。
空調設備の増設が適している場合もあれば、スポットクーラーや大型扇風機などを活用する方法、作業エリアを間仕切りで区画化する方法など、現場の状況によって適した対策は異なります。
特に、
- 天井が高く、空調が効きにくい
- シャッターを頻繁に開閉する
- フォークリフトが頻繁に出入りする
- 作業員が特定のエリアに集中している
- 工場全体を冷やすと電気代が高くなる
- エアコンを増設しても十分に涼しくならない
このような課題がある場合は、まず「どこを、どのように冷やすべきか」を見直してみることが大切です。
間仕切りカーテンや間仕切りシートを活用して作業エリアを区画化することで、冷暖房の空気を逃がしにくくし、空調効率の改善につなげられる場合があります。
現場の形状や作業内容、フォークリフトなどの動線によって、適した間仕切りの方法も変わります。
「間仕切りを設置したいけれど、作業の邪魔にならないか心配」
「フォークリフトが通る場所でも設置できる?」
「工場の形状が特殊で、既製品では対応できない」
そんな場合も、まずは現場の状況を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。

まとめ|2026年の夏に向けて、今こそ職場の暑さ対策を見直そう
2025年6月から、職場における熱中症対策が強化されました。
企業には、熱中症の発生を想定した報告体制や対応手順を整え、作業者へ周知することが求められています。
しかし、本当に大切なのは「義務だから対策する」ということだけではありません。
熱中症を防ぐためには、まず従業員が働く環境そのものを見直すことが重要です。
特に工場や倉庫では、
「エアコンを増設する」
「冷房の設定温度を下げる」
だけでは、十分な暑さ対策にならないことがあります。
「冷やす」だけでなく、
「冷気を逃がさない」
「必要な場所を効率よく冷やす」
という視点から、現場に合った対策を考えてみることが大切です。
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「空調が効きにくい」
「冷気が逃げてしまう」
「工場の一部だけを効率よく冷やしたい」
など、現場の暑さ対策でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
■本記事は、厚生労働省が公表している「職場における熱中症対策」の情報をもとに、2026年7月時点の情報として作成しています。法令や制度の最新情報については、厚生労働省などの公的機関が公表する最新情報をご確認ください。